プロローグ

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あらためていまになってわかる、自分の兄の凄さ。  2球目、カーブ。昨日のようにあたってはくれずいつもの通りにバットは空を切った。          どよめくベンチ。大体オレのスイングを見たやつはこの反応だ。みんな口を揃えて「当たったらどこまで飛ぶんだ?」と言う。    殆ど当たったことはないが。            結局1打席目はあっさり三振。(ここでベンチが再び盛り上がる。)      まぁ遊びの野球なんてこんなもんだ。むしろ三振したほうが盛り上がったり。  そんな中ただオレだけはこの試合に野球人生を勝手に賭けた。誰に誓うでもなくただ勝手に。       守備につきそんなことを考えていた時直道がホームランを打った。いとも簡単に。     悠々とベースを回る直道。一塁からそれを眺めるオレ自分の手を見つめてみる。            最後の大会に向けバットを振込んだオレの手は血豆とアカギレで黒ずんでいた。         今まで自分だけセンスがない事を呪ってきた。    でもそれも今日で終わる。勝っても負けてもここで終わる。今まで振込んだ自分自身のバットに偽りがなければ…打てる。
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