プロローグ

6/9

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
信じたかった。自分のバットを。努力すれば報われるということばを。     誰よりもバットを振った自信はある。        一度でいい。マグレでいいからこの努力が報われてほしかった。       第2打席目。不思議な気持ちだった。今までにない位落ち着いている。その証拠に初球のボールになるカーブを見逃せた(いつもならオレの体は扇風機になる)。 ストレートにもスムーズにバットが出た。ボールの下を叩きファールになる。  今思えば当たり前だったのかも知れない。緊張もなく冷静にバットを振ればオレのヘッドスピードならどんなボールにも対抗できる。           その時初めて気付いた。本当に失いたくないものを前にしたからだろうか。   焦ってバットを振らなくて手元まで引き付けても充分に間に合うことを。      この時ようやくオレのなかのスラッガーが目覚めた。 3球目、スライダー。 目覚めたばかりのスラッガーはスライダーが外角へ逃げるのを確認し… 空の彼方へ消し去った。 
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加