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「弾」として発射された青紅剣は剣士に突き刺さること無く、簡単に打ち払われ地面に直撃するという終わりとなった。
だが、それは空気を切り裂き現れた故に始まりの鐘の代わりとなる。
神速の踏み込みで誰よりも早く仕掛けたのは白銀の獅子。
胴に強烈な薙ぎ払いが入るが、剣士の剣に阻まれる。
「――!!」
しかし、その防御も弾を弾き生まれた隙を無理矢理埋めたもの。その後には更なる隙が生まれる。
ましてやこの強烈な胴薙ぎは、獅子にとっては『囮』。真の狙いは二撃目にあり。
「はぁあああっ!!」
剛烈な覇気と剣閃は、剣士に袈裟の傷を叩き付けた。
「ぐ……おっ――!」
「こっちもさっさとケリ付けるわよっ」
凛の正拳が容赦無く少女を襲う。
それに対しながらも少女の表情は寒気を覚えるような笑みに歪んでいた。
「私に敗北は許されていま――」
が。
「――っ……ごほっ、げほっ……!」
ダメージは既に士郎と出会う前から負っていた。
咳をする口を押さえた手からは、血が滴り落ち、彼女の口元もまた同様だった。
「待て、遠坂!」
「!」
士郎の制止を受け、思わず凛の拳が止まる。
「ちょっと、なんで止めるのよ士郎!」
「俺達は人殺しをする為に戦ってるわけじゃない。わざわざあんな状態の相手に追い討ちかける必要無いだろ」
士郎が少女の肩に手を置き容態を心配するが、その手は弱弱しく払いのけられ、少女は士郎を精一杯睨み付けた。
「戦い、の……はぁ、はぁ……最中……です――げほっげほっ!」
「無理するな!」
脚に力が入らず膝が崩れた少女を抱き留めたのは、その身に大きな傷痕を残したままの剣士だった。
「……ライダー、まだ……戦いは」
「いや。この状態では私も満足に戦えない。それはマスターが一番分かっているはずだ」
「……」
少女は歯を食いしばると、士郎達を見て改めて宣戦布告をする。
「私に、敗北は許されていません…………必ず、決着をつけにきます……」
「……どうしても戦うしかないのか」
「それが、聖杯戦争……ですよ?」
苦しげに不敵な笑みを浮かべると、少女は剣士の陰に隠れた。
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