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少女の感情には揺れが一切見られない。その態度が余計に凛の怒りを買う。
「……ええ。こっちは衛宮士郎、私は遠坂凛本人よ。それで、偽善者集団創設者の子孫様が何の用かしら。私達急いでるんだけれど?」
噛み付くような態度の声も呑み込む静寂な少女は右手を顔の高さにまで掲げた。
その中指には錆付いた指輪。
「では簡潔に用件を済まさせていただきます。衛宮士郎、遠坂凛。御二方、御本人の確認が取れましたので聖杯戦争参加者として攻撃を開始します」
長々と口上を述べた少女の背後に、剣を携えた金髪の青年が蜃気楼の様に現れた。
「聖杯戦争!?」
「いきます」
士郎の反応を無視し、少女は金髪の剣士をけし掛ける。
「くぅっ!?」
袈裟斬りに振られた剣を上体を反らして回避。
そのまま回転して放たれた二撃目の逆胴は――
「――え?」
踏み込み自体が浅く、掠める気配すら無かった。
「こいつ……」
「もしかして……」
「ちっ、外したか」
「「めちゃくちゃ弱い――!!?」」
「今のはちょっと、加減しただけだっ」
「焦ってる!」
「やっぱり弱いのね!」
「ウルサイ!!」
金髪の剣士は必死に否定するが、その必死さが逆に弱そうに思わせてしまっていた。
「く……次は本気でいく。覚悟しろ、人間」
「……?」
「はあっ!」
大きく踏み込んだ振り下ろし。剣が刻む軌道がバレバレの大振りは当然、士郎に掠りもしない。
「ちょっと待ってって!戦う前に君に言いたいことがあるんだ!」
「宣言したはずだぞ」
次の瞬間。
「――」
「『次は本気だ』と」
士郎の右胸から左肩の鎖骨に架け大きな切り傷が出来、血を吹きだしていた。
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