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「ぐぅお!!?」
「……!撃ち抜きなさい、アーチャー!!」
もしやと思い、凛はどこにいるとも知れないイイトコ取りばかりする自分のパートナーへと叫ぶ。
その呼び掛けが来ることを知っていたのか、それとも予想していたのか。
一秒も間を置かず、剣士目掛けて、爆撃が起きた。
コンクリートを粉砕し、巻き上げ、爆発音と聞き間違えるほどの轟音を確認した赤い弓兵は、己の役目は果たしたといった顔で
「まったく。相変わらず変わった所に呼び出してくれるな、凛は」
穂群原学園の屋上に一人佇み、呟いた。
「ぐ……ぉ……」
予想を上回る強烈な連撃に剣士は、膝立ちでいることすらも危うい状態に追い込まれていた。
「シロウ!?これは、いったい――」
「セイバー、俺にもよく分からないから説明は後だ!」
一つ頷くとセイバーは剣士と白髪の少女へと向き直り剣を構える。
だがそこにいた少女は先ほどまでと違い、困惑に顔を歪ませていた。
「うそ……なんで、令呪…………ひだり、て……?」
「……?」
「あなた……だって……別のところに、令呪がある、から…………」
「……何を勘違いしてたのか知らないけど、冬木の聖杯戦争は三年前、俺達の第五次で聖杯は無くなって終結してるんだ」
「………………え?」
「俺達が戦う理由なんてどこにも無いんだ」
「お、わっ……て……?」
認めたくない事を口に出し、少女は頭を抱え崩れ落ちた。
髪をくしゃくしゃに掻き乱しながら必死に否定を試みる少女の姿は、どこか、叱られて泣きながら謝っている子供のようにも思えた。
「……戦いは……終わったと見てよろしいのでしょうか、シロウ」
構えを解いて、士郎の方に顔だけ振り向く。
「ああ……これで理解してくれなかったら、まだ戦うことになるけど」
少女は依然として頭を抱え込み俯きながらぶつぶつと何かを呟いている。
その少女の傍らへ剣士が近付き何事か囁き掛けた。
「行こう、遠坂、セイバー」
「……ええ」
「帰るのですか?」
「ああ。一年ぶりの我が家だ」
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