16人が本棚に入れています
本棚に追加
その夜、美香は不思議な夢を見た。
自分が、ビルの屋上に上り手すりから地上を見渡している。
恐怖感は、不思議と感じていなかった。ただ、ここから飛び下りたらどうなるのか?墜ちていく瞬間に意識が失くなれば、楽に死ねるのか。
中学の時、隣りのクラスの男子が、自宅マンションの屋上から飛び下りて亡くなった。 自殺だった。
彼は、一部の生徒から、いじめにあっていた。クラスメイトも担任教師まで、その事実を知らなかった。走り書きのノートには、いじめた者達の名前と、彼らに対する憎しみが赤裸々に綴られていた。
その自殺した生徒は、美香が意識を失った時に、美香の前に現われた、あの少年だったのだ。
「あたしに何を伝えたかったのだろう。」 今にして思えば、彼も病んでいたのではないのか、誰にも相談出来ずに苦しんでいたのではないのか。
「おはようございます。検温です。」看護師の声で、美香は夢から現実に引き戻された。
最初のコメントを投稿しよう!