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「まぁ、そんなにカリカリするな悠斗。
口調や雰囲気でただの人間じゃない事ぐらい分かるだろう」
「鎧さんだしね~」
確かに……。
流石、一家の大黒柱。何だかんだでちゃんとしてるな。
「あっ、屁こいちゃった」
二秒前の俺、馬鹿野郎ー!!
「じゃあ、最後の質問。何であんな所にいたんだ?」
取りあえず、親父は無視して隣のサム・ライ氏(20)に聞いてみる。
すると、さっきまでとは明らかに違う真剣な表情でゆっくりと口を開く。
「我ら真田家は徳川秀忠の軍勢の足止めを仰せつかった。
拙者は別働隊の一員として若様と共に山道を進んでいたのだが……途中、伊賀の忍に奇襲を受たのでござる。
拙者は若様を御守りする一心で殿を務めたが、不覚にも傷を負い、味方とはぐれ、忍共に囲まれ、死を覚悟した所で気付けばあの場で空を仰いでいたでござる」
自分自身不可解で仕方がないのだろう。
出来事を辿るように言葉一つ一つを丁寧に、しかし不安げに紡いでいく。
いや、それ以上に俺は混乱してる自信があるよ……マジで。
この暴走戦艦サ・ムライの言葉を全部信じるなら、とんでもない結論にいたるじゃんか。
「ふーん……つまり、俗に言うタイムスリップか」
「ロマンチックね~」
あ、この上なく簡潔に纏めちゃったよこの方々は。何でそんなに冷静かなー?
一人で慌ててる俺が随分馬鹿に見えるじゃん。
「親父!こいつの言う事を全部信じるのかよ!」
「パパを見くびるなよ、悠斗。嘘を見破れん程馬鹿じゃない」
親父らしくない真剣な眼差しでそう言い放つ。
まぁ、そこまで言いきられては俺としてはもうする事は無いな。
親父が信じるのなら母さんも信じる訳で、必然的に俺も……
「パパ格好いい!」
「でへへぇ~、そうかい!?ママ」
……いや、疑心は持っておいた方がいいな。
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