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ここは……どこだ?
俺は、生きているのか?
下を見ればゆっくりと歩を進める両足。
そうか……俺の命の灯火はまだ消えていないか。
戦場(いくさば)からいつの間にか森に来ていたようだ。怒声と悲鳴と金属音と血の香りを随分遠くに感じる。
「ふぅ……」
とにかく休まないと体が保たない。近くの巨木に寄りかかり腰を落とす。夜雨のせいか、随分と冷たく思えた。
視線を下に落とせば、俺の赤備えの鎧とは違う些か黒の混じった朱に体が染まっている。
早急に本隊と合流し、徳川の足止めをせねばならぬのに……まさか伊賀の忍に奇襲を受けるとはな。
「若様はご無事であろうか……」
若様を守らねばならぬ俺がこの様では旦那様に叱られるな。
……ん?囲まれたか。
「…………」
黒尽くめの装束……伊賀の忍がここまで来たのか。
ざっと十人……俺一人の為に大層な歓迎だな。
「名を名乗る気は無さそうだな」
「我らは影の者。名など意味を為さぬ」
長らしき忍が口を開く。厄介な連中だ。挙動一つ一つに修練されたものを感じる。
我が家ももっと忍を充実させねばな。帰ったら旦那様に進言してみよう。
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