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「……死んでもらう」
小太刀……独特の湾曲型の形状から言って毒仕込みか。
「俺の首、それ程安くはないぞ」
最後の力を振り絞って立ち上がり、ありったけの殺気を睨みに込めて刀を抜く。
まぁ、これで引いてくれる連中なら苦労はないがな。
やはり、戦いは避けられぬか。
時雨よ、今までありがとう。お前という名刀があったからこそ俺は此処まで生き長らえられた。
そして、最後の戦いだ。一人でも多く冥土へ道連れにしてくれよう。
「行くぞ!」
自らを鼓舞するように叫び、近場の相手に渾身の振り下ろしを繰り出し一人を両断する。しかし、休む間もなく四方から小太刀が疾る。
それを倒れ込んで何とかかわし、刀を横に薙ぎ払う。
上手く当たり、左右の忍の体から血が吹き出て俺を赤に染め上げる。
「まだまだっ!」
俺はすぐに立ち上がり再び突撃を仕掛けていく。
だがその時、左から熱いものを感じた。とっさに刀を振るうが、すぐに距離を取った忍には当たらない。
くっ……頭が揺らぐ。こんなに毒の効果が早いとは。
体が言うことを聞かず、思わず座り込む。……腕が上がらぬ。もう、天を仰ぐぐらいしか出来ぬな。
出来ることなら、旦那様と若様の作る平和な国を見たかった。
皆が笑顔で暮らせる夢のような国を……。
光に包まれてゆっくりと時間が流れているようだ……。これが走馬灯というやつか。
あぁ、俺は死ぬんだな。
もう……休んでもいいんだな。
そう自分に言い聞かせて、自ら視界を閉じた。
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