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気を取り直して自室で着替え終えると、下に降りてテーブルの上にあった野口さんを財布に突っ込んで玄関に向かう。
「今日は予算ギリギリまで買ってやる。覚悟しやがれ野口さんよ」
そんな小さな自分に少し嫌悪感を抱きながら家を出た。
やっぱり雨だ。帰ってきたときより更に強くなってる。厚着して正解だな。
そう思いながら黒い傘を広げて薄暗くなってきた外へと歩き出す。
「ふっ……カツ丼大盛に、プリン二個で910円。まぁ、この位で勘弁してやろう」
若干浮いている……?
馬鹿な!?奥様方の視線が痛いぞ。
と、まぁ企みが口に出ていたことに気付いて足早にスーパーマーケットを後にする。
何だか行きづらくなっちまったぜ。
「やまねぇな」
一面厚い雲の空にぼやくがそんな事で止むはずもなく、鬱陶しさを覚えながら来た道を戻っていく。
その途中、いつもなら過ぎる細い分かれ道にふと足が止まった。
真っ直ぐ行けば大通り、ここに入れば多少家までの距離は縮まる。
……でも、何か怖くね?
人二人分ぐらいの道幅。そのせいか街頭などはなく、真っ暗な口を開けて俺を誘っているかのようだった。
だが、意志に反して俺足はそちらに向かった。まるで、何かに導かれるかのように……。
ま、気のせいだな。早く帰りたいだけだろ。
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