弱ゲドwith巫女茄子

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旧ナービス領内、サークシティ。武装勢力(バーテックス)の本拠地であるこの地に、複数のACが集結していた。 「オーライ!オーライ!」 AC用の搬入口に立つ作業員の持つ誘導灯に導かれ、一機の軽量二脚ACが暗がりへと歩み行った。茶色の地味な装甲に鷹のエンブレムを持つその機体は、バーテックスの有力レイヴン《烏大老》の乗機(エイミングホーク)であると分かる。 これだけではない。先程から、複数のACがこの搬入口を通って施設内部へと入場していた。まるで、パーティーに招かれたゲストのように。 「…おい、マルコ」 「何さ」 そのため、作業の合間に手を休めた作業員が同僚に疑問を投げ掛けたのも不思議ではなかった。 「俺は今朝からここで誘導してるけどよ、バーテックス所属のACは殆ど来たし、見たこと無い奴も居たぜ。明らかに妙だ」 「見たこと無い奴…?」 「そうだよ。それに、全く知らないパーツで構成されたACも居た」 「へぇ…」 巨大なクレーンらしき重機に、煙草をくわえて寄りかかる作業員は相槌を打った。 「ジャックは一体ナニを考えてんだろうな…」 「さあな…」 二人の作業員は適当な会話を交わしつつ、無機質な金属製の空を見上げた。そしてそこに再びACが接近し、作業員は面倒臭そうに作業を再開した。       「諸君、よく集まってくれた」 ナニかのホールと思しき広い部屋に、スポットライトの光をその身に浴びてステージに立つ、一人の男性が居た。男性は白いコートを纏っていたが、その上からでも分かるくらいに筋肉が盛り上がっており、明らかに只者では無かった。 当然である。その白いコートには、騎士が身に付ける甲冑の兜と、斧をモチーフにしたエンブレムが縫い込まれてあった。このエンブレムを知らぬ者は、余程の世間知らずであろう。その男性こそ、バーテックス主宰(ジャック・O)であった。 「我々が求めるのは、真の強者のみ。そのためにも、諸君らには…」 「ジャック、御託はいい。早く始めよう」 そう言ってジャックの話を遮ったのは、バーテックスの異端児(Ω)だった。彼は既に己の射突ブレードを起動させており、丁寧に動作チェックをしている。 「ふむ…言葉は不要、か…まあいい。では諸君…」 ジャックは、集まったメンバーへと向き直った。メンバーもまた、ジャックに熱い視線を注ぎ、彼の次なる言葉を持った。そしてジャックは、ゆっくりと口を開いた。 「や ら な い か」
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