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三人のハイレーザーキャノンが臨界点を越えた頃、その横に立つ大柄な男もまた、自身の主砲をひけらかしていた。
「悪いが、やらないか」
声の主はバーテックスの尖兵、ライウンだった。
彼の自慢は、脚部の射突型エネルギー武器であり、そのサイズ・出力はバーテックスでもトップクラスを誇っている。
しかしながら、ジャックが最初に彼と手合わせをして力量を見計らった際、その豪快さゆえの配慮の無さが気に食わなかったのか、彼に対するジャックの評価は低い。とはいえ、その実力は確かな物があり、ジャックが目を付けた者に対する試験役として用いられる事も多い。諸事情はどうあれ、バーテックスでも重要な人物である事は間違いなかった。
「通すわけにはいかない……やらないか」
そのライウンの申し出に乗ってきたのは、バーテックスの異端児ことΩだ。
彼はアーク在籍時より、享楽主義者として知られている。彼がこれまで失わせてきた《新人》は数知れない。そんな彼も、ジャックの巨大射突ブレードに惚れ込んだ人物の一人である。この男を引き込めるあたり、ジャックの能力は驚くべきものであろう。
「悪いが命令だ、逝ってくれ!」
そう言うと、ライウンは主砲をΩへと撃ち込んだ。彼の愛機のコンセプトの元になったと言われる、絶大な射突型エネルギー武器だ。
「いい腕だ…」
思わず、Ωから感嘆の言葉が漏れた。彼は実のところ、最近の情勢の変化から、より多くのレイヴンとやりあえると期待していたが、あまり良い相手とは巡り会えなかったのだ。ゆえに、ライウンのこの苛烈なアタックは、彼にとって久方ぶりの歓びと言える。
「すまん…!」
存外あっさりと堕ちたのは、ライウンの方だ。ここ数日、大した戦闘が無かったために、エネルギーの充填率が上がっていたのだろう。Ωの内部フレームに、高熱・高密度の攻撃が注ぎ込まれた。
「「…ふぅ」」
ライウンはゆっくりと主砲のロックオンを解除すると、 Ωと共に安息の溜め息を吐いた。だがそこに、なお迫る白髪の人物が居た。
「お尻好き好き烏大老が相手だ!小僧、私のお尻で果てろ!」
最古参勢の一人、烏大老が年齢に似合わぬ筋肉とガトマシのように逞しい射突ブレードを露にしつつ二人に近付いた。
彼もまた、若き時分より連戦を重ねてきた強者であり、彼に討ち取られた者も少なくない。ジャックも、そこに目を付けたのだ。
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