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だが、彼の背後より伸びる手がそれを掴み、強引に奪い取った。彼は身がすくむような思いだったが、慌てて振り返った。その腕力からして、彼以上に強化されたプラスであるに違いないからだ。
「アライアンスのレイヴンか…」
彼から銃を取り上げた男が、彼に対し言い放った。
「やらないか」
「こ、こいつらバーテックスなのか!?」
突然の遭遇に、モリ・カドルは驚き惑った。しかしこの時、増援は確かに近付いていた。
「戦場でやる覚悟は出来ているな、やらないか」
「なにを…いってる?やら、な、いか」
「悪いが、やらないか」
「小僧、私とやらないか」
「手こずってるな、やらないか」
複数のレイヴンが四方より現れ、モリ・カドルを取り囲むように歩み出した。皆、脚部大型射突兵器を前面に押し出している。
「た、助けてくれぇ!!」
彼は情けない悲鳴を上げ、無我夢中で駆け出した。無論、いいレイヴン達は口端を歪めて、ゆっくりと彼を追いかけている。
『聞こえるか!?こちらへ逃げ込め!』
「?!あ、遊びは終わりだっ!!」
彼は突然に響いてきた声に確かな希望を感じ、唯一開け放たれていた扉へと飛ぶように走った。そして遂にそこへ辿り着き、急いで扉を閉めた。
「…助かった。礼を言うぞ」
彼は安堵の溜め息を吐き、声の主へと感謝の言葉を述べた。
「…聞こえるか?ねぇ」
しかし、返事は返ってこない。彼は尚も呼ばわり続けた。
「聞こえるか?ねぇ、ねぇ」
「…遅かったじゃないか」
「?!?!」
漸く返ってきたその返答は、彼にとって死刑宣告も同義だった。突如視界に現れた男は、非常に絶大な巨大射突ブレードをこれ見よがしにコッキングしている。
「全ては私のシナリオ通り、私が生きた証を…最後に残させてくれ」
「やらないか」
「尻を貸そう」
「なめられたものだ」
「エロエロイレギュラー!」
「とっつくにょ」
直後、扉が蹴り倒され、無数のレイヴンが乱入してきた。その中の数名が彼の下へ近付き、射突兵器を利用して彼に攻撃を加えていった。
「ま、まずい!管制室っ…ウワァー!!」
何発もの弾丸が、一斉に彼に撃ち込まれる。その様は、正に拷問であった。
「管制室ちゃんと援護しろよぉ!!う、うわあああぁぁぁっ!!助けてぇっ…!!」
遂に、彼の背部アタッチメントが高密度エネルギー弾の一撃により満たされた。
「やはり弱者とは出来んな…」
その張本人たるジャックは、悠然と呟いた……。
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