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まるで魔獣を飲み込むかのような、その金色の一閃によって魔獣の顎の付け根から後ろが消し飛ぶ。
閉じようとした目に飛び込んだ”色”を見て、彼女は目を見開きそして呟く。
「やっと来た…」
噛み付く力を失った上顎と下顎だけの魔獣の頭を、食い千切られずに済んだ腕から急いで引き剥がす。
そして”色”の持ち主の方へ…”アイツ”へと、腕に治癒魔法を掛けつつ振り返る。その先には…
「おっせーぞレニス!危うく腕、食われるとこだったぞ!」
「すみません、遅くなりました」
レニスと呼ばれた
~白地に金糸の縁取りを施した服に、同じく白地に金糸の縁取りのローブを纏い~
~腰まで伸びた流れるような金髪を、荒野の風で棚引かせ~
~琥珀、それとも金か、見るものを魅了する色の双眸を輝かせ~
左手に一振りの刀を携えた女性が立っていた。
その姿を見た赤い服の彼は「危なかった…」と呟き、黒い服の彼女を治癒に専念させる為に矢面に立つ。
それと時同じくして、近隣で魔獣対処していた、深緑の服に同色のローブを纏った男が魔法を展開し、魔獣を蹴散らしつつ3人の下へ駆け寄る。そしてレニスに告げる。
「ここは我々が間を持たせる!”舞姫”、詠唱の準備を…」
「いえ、大丈夫です。要りません」
”舞姫”と呼ばれたレニスの、最大最強たる魔法の、詠唱の為の時間稼ぎをするつもりだった彼にレニスはピシャリと言い捨てる。
驚きの表情を浮かべる彼を他所にレニスは左手に持つ刀を鞘ごと肩の高さまで持ち上げる。
そして…
『夕焼けに…』
魔力を帯びた声が独特のエコーと成って響き渡る。持ち上げた刀の柄に手を添え
『映る獣は…』
鯉口を切り、真上へ刀を抜き切ると
『戯れど…』
弧を描く様に刀を、腕を開いて水平にもって行く。同時に鞘を逆手に持つ刀の様に、これも水平にもって行く。
両腕を開ききった時…刀に金色の魔力の光が刃に纏われる。
そして、歩き出す。
レニスに魔獣達が襲い来る。
先ず襲い来るのは右前方からの獅子系の魔獣。
レニスは緩やかに切っ先を180度右回りに返す。
その動きだけで魔獣を、金に染まる円形の魔力痕を刻み込む。
魔力痕を刻まれ、動けなくなった魔獣の脇から竜系の魔獣が奇襲の如く飛び掛ってくるが、返した切っ先をそのまま穏やかに左へと、まるで開いた扇を運ぶかのようにもって行く。それによって竜系の魔獣諸共、後方の魔獣を多数、金の魔力痕で刻む。
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