序-ハジマリ-

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序-ハジマリ-

 普段通らない道を歩いていたら、古い大きな家があった。  表札の墨文字は薄くなり、何と書いているのかも読めない。  手入れの行き届いていない、生垣。人が住んでいるのかもわからない、古い家。  ちらりと覗く、紅。  生垣の隙間から中を見ると、紅葉の下で、幼女が手毬をついていた。  てんてん、てんまり。  肩で揃えた、豊かな黒髪。赤い唇、白い肌。黄色い小菊を一輪、髪に挿している。  てんてん、てんまり。  ころり、幼女の首が、  ……落ちた。  落ち葉が、髪に絡む。  砂に汚れる、白い顔。  顔が、私の方を見て、にこりと笑い、  すうっと、消えた。  後には、血のような紅葉が散り、髪に挿していた小菊が落ちていた。
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