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25
俺は、真希からの連絡をずっと待っていた。
真希は、きっと俺と美佳子が別れたことを知ったんだ。
そして、俺がもう真希に逢わないと誓ったことも……。
12月24日、クリスマスイヴ。
会社からの帰り道、俺は真希のマンションを訪れた。
しかし、やはり真希は居なかった。
俺は、真希に伝えるつもりだったんだ。
もう、真希には逢えないって……。
俺が真希を愛することは、間違いなく真希を苦しめる。
だから……。
俺は結局、クリスマスに全てを失ってしまった。
でも……良かったんだ、これで……きっと。
俺は、トボトボとマンションに帰った。
すると、部屋の前に誰かが立っていた。
それは……美弥だった。
「美弥……どうして?」
「わたし……本当は……ヒロキが、わたしの一番だったのに……」
「美弥、お前……」
「わたし怖かったの……ヒロキを本気で愛してしまうことが……あのときの言葉は、全部嘘……あの夜も、わたし独りだった……」
涙を流しながら、美弥がじっと俺を見つめていた。
「ごめんなさい……わたしヒロキを信じられなかった……でも、失って分かったの……本当にヒロキのことを愛していたんだって……」
俺だって、美弥を信じられなかったんだ。
俺が本当に愛していたのは、間違いなく美弥だったのに……。
俺は優しく美弥を抱き寄せて、耳元で囁いた。
「美弥……やり直そう、最初から……もう一度……」
美弥を信じようと思えること。
それが、俺の幸せなんだ。
俺は美弥の唇を優しく奪いながら、ゆっくりと目を閉じた。
美弥との、確かな未来を信じようとしながら……。
メリークリスマス!
『Triple Loop(トリプル・ループ)』
了
CopyRight by Hiroto Izumi 2008
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