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1 美弥の部屋には、灰皿が無い。 電熱式のコンロの上に設置された、ユニット式の換気扇のスイッチを押して。 俺は、NEXTに100円のターボライターで火を点けた。 ふぅ、と吐いた薄青紫の煙が換気扇に吸い込まれて行く。 薄い革ジャケットの内ポケットから、アルミ製の携帯灰皿を取り出して。 灰皿の蓋をスライドさせながら、コンロの横に置いた。 美弥が浴びるシャワーの音が、バスルームからかすかに聞こえてくる。 俺は煙を燻(くゆ)らせながら、ボーっと考える。 美弥とは、もう終わりにしなければならない……。 そのことは、夏くらいからずっと考えていたことだ。 でも俺は、その決断がなかなか出来ないでいた。 美弥は、俺にとって便利な女だ。 気が向いたときに、恵比寿にある美弥の部屋に行って。 美弥を抱いて、自分の部屋に帰る。 そんな生活を、去年の秋から続けていた。 美弥は、きっと俺を愛してくれているのだろう。 だけど、俺はどうしても美弥を深く愛せない……。 そのとき、突然。 俺のケータイが振動を始めた。
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