81人が本棚に入れています
本棚に追加
4
シャワーを浴びた俺は、腰にバスタオルを巻いただけの姿でバスルームを出た。
そのまま、まっすぐにベッドへと向かう。
背中をこちらに向けた形で、美弥はベッドに横になっていた。
「美弥……」
あれっ?寝てるの、かな……。
美弥の顔を覗き込むと、美弥は眠っていた。
涙を、流しながら……。
美弥の涙を見た俺は、何故だか胸の痛みを感じていた。
美弥……。
俺は、美弥の髪を撫でながら。
美弥の左頬に、優しくキスをする。
そばにあった、薄い羽毛布団を美弥に掛けて。
俺は、バスルームへと戻る。
ゆっくりと服を着ながら、俺は考えていた。
俺は、本気で美弥を愛している訳ではない。
だけど、どうしてこんなに苦しいんだろう?
俺は美弥にとっては、何人かの男の内の一人でしかないはずだ。
美弥の涙は、きっと。
俺に対する涙なんかじゃない。
それに、俺だって美弥と同じなんだ。
俺は、美弥だけを愛するなんてしない。
美弥の部屋を出た俺は、夜風の冷たさに震えた。
それは、もしかしたら。
俺は、自分自身の心の冷たさに震えていたのかもしれない。
透き通った暗闇が、俺を包んでいた。
そのことが何故か、今の俺には心地良い。
恵比寿駅に向かいながら、俺は美弥と出逢ったときのことを思い返していた。
あのパーティーで、美弥と出逢わなかったとしたら。
俺は今、幸せだったのだろうか?
いや、それとも……。
最初のコメントを投稿しよう!