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「にゃーにゃー」
猫は器用に飯を食いやすいようにその場で噛み千切っている。
その姿何となく見やる。
すると、幸仁はいつの間にか石畳の階段に腰掛けていた。
しかし、明日の準備をしてサッサと寝なければならないことを思い出し、おもむろに立ち上がる。
「さって…猫坊よ。もう僕は帰るからな?」
そう言い、猫の頭を撫でてやれば猫は嬉しそうに目を閉じ、「にゃー」と鳴いた。
手を放し、そら行け、と身振り手振りで猫に伝えると、猫はもう一つ「にゃー」と鳴きその身をしなやかに踊らせ何処にか去っていった。
それを見送ると幸仁はおもむろに立ち上がる。
帰ろうとし階段を降りようとするが、ふと、そういえばこの神社の本殿は見たことがないな、と思ってしまう。
それも、好奇心だけが先走りした、利益の無い行動。
本殿見たから何になる。この長い階段を上って、食事の時間を更にずらしてまで見る価値はあるのか?いや、ないだろう。だから、帰ろう。
そう思っていれば良かったのかも知れない。
そうすれば、少なくとも今まで通りの普通な生活だったのだから…
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