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幼き頃、ずっと孤立していた俺は外に行っても独りやった。
両親も…俺を愛してはいなかった。
ある晴れた日。
俺の住んでいた街の奥の方に木々が生い茂ってる並木道があって気味悪いと街のみんなは立ち寄らなかった。
ふと気になった俺はその並木道に足を進めた。
奥に進めば進むほど明かりが見えなくなって、その先に廃墟みたいな洋館が建っていた。
なぜか怖くなかった。
自然と洋館へと続く道を進み、入り口の扉を開いていた。
ギーッていう音とともに扉は簡単に開いた。
「…すごい……誰か…おるんかな?」
次々部屋を見て行っても何も出てこなかった。
ずっと歩けば一番大きな扉があった。
幼き好奇心はとどまる事を知らずに扉を開けたそこには蓋の開いた棺があった。
それを見た幼き俺はさすがに少し恐怖を抱いた。
恐る恐る棺に近付き中を覗いた。
「……綺麗…」
言葉通り幼い俺でもわかるくらい綺麗な寝顔で眠る存在があった。その存在こそが光一やったんや。
でも、こんなところに独りで眠って寂しくないんかな?って思って光一の手を握った時だった。
ふと光一の顔を見たら閉じていたはずの瞳が開いていた。
思わず手を引っ込めてしまった。
そんな俺を見つめ、フッと怪しく笑い、起き上がった。
「珍しいな。人間のお客さんって。君はよっぽどの物好きなんか?」
なんかこの口調…とか思ったりもした。
「ものずき?」
でも話す内容になんのことかわかってなかった俺。
「あはは、危ない。早く帰りな」
盛大に笑って光一は俺の頭を撫でてそう言った。俺はその笑顔に…惹かれた。
「なにが危ないん?ぁ。…お兄さん、名前教えて?」
できるならこの人のそばにいたい。心地良くて、暖かいから。
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