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俺の問いに少し困った顔しながら棺から出た彼は俺と同じくらいの身長だった。
「…光一って言うねん。けど、仲良しさんはしてやれん。俺、ヴァンパイアやから」
光一って言うんや…
良い名前やね。
素直にそう思った。
でも当時の俺はヴァンパイアってものを知らなかった。
「素敵な名前…でもヴァンパイアって何?」
「血を吸う生き物。…そろそろ日が暮れる。早く帰りな?」
どこまでも優しくて、暖かく…俺の頭撫でる手は優しすぎて本当にここにいたいと願った。
「…ぅん…」
「またきていいから」
「本当?!」
思わぬ一言に思わず叫んでしまった。
「あぁ。街の入り口まで送ってあげるよ」
光一に手を引かれて洋館から出て並木道を歩いた。
一緒にいたい、その思いを幼いながらに押し殺して歩いてたらあっという間についたらしく。
「じゃぁ…またね」
「ぅん!ありがとぉ…」
できる限りの笑顔で涙を殺して、帰っていく光一の背中を見送った。
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