葉。

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いい香り。 鼻をくすぐられて我に反った。 「コーヒーで良かったですか?紅茶もありますが」 「はい。好きです」 彼がカウンター席に差し出してくれた。 席について香りを楽しむ。 「挽き立てです」 コーヒー豆に詳しくはないけど、上品な香りがした。 「ミルクとお砂糖。どうぞ」 私の気配を読み取ってか、気が利く。 あぁ。 「おいしい」 「自慢ですから」 言葉の割に嫌味じゃなくて。 「普段は本を読みに来られる方がおもなんですよ」 優しい声。 初対面なのに、なんか安心する。 大人の余裕ってやつ。 あれ。 「他に…お客さんは?」 しまった。声に出して失敗した。 「えと。言いにくいんですけど…今日、定休日なんです」 えっ。 「ごっごめんなさいっ」 「あ、大丈夫ですょ。そもそも声かけたの僕ですし。それに…普段も客の入りは閑古鳥です」 決まった客しか来なくて。と苦笑した。 「えっと、じゃぁ…僕もコーヒーいただきますね」 もしかして私が気兼ねしないように…。 「はい。すみませ…」 違う。えっと…。 「あの、ありがとうございます」 これが大人よね。 …聞こえたかな。 盗み見たら、目が合って彼は微笑んだ。 綺麗なオリーブ色の瞳。 カウンターにも本が並んでいた。 分厚い洋書から雑誌、絵本もあった。
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