愛する人へ。

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 「ただいまー」  リビングのドアを開けた智明(ともあき)を、 「おかえり~」  キッチンに立っていた諒(りょう)が、振り返り、笑顔で迎える。 「来週から残業入るかもな」 「かなり遅くなりそう?」 「まぁ、そんなに遅くは……」  上着をぬぎ、ネクタイをとって、それらをソファの背もたれに、いつものように放った智明は、その少し先、ローテーブルの上に置かれてあるものに、目線が止まった。  大きな紙袋。  丁寧に二重袋になっている。  袋に印刷されたロゴマークと店名は、有名書店のそれである。 「――」  智明はじーっと、諒を見据えた。 「な、なに」  背中に感じたのか、ゆっくりと、諒がこちらに顔を向ける。 「りょーく~ん、こ・れ・は、なにかなぁ~?」 「ええっと」  目は笑いながらも、口端があきらかにひきつっている諒は、 「本、でーす」  冗談は通用しないと察知したのだろう、素直に答えはしたが、声は小さかった。 「ちょっと、いいかなぁ」  智明はちょいちょいと、手招きする。 「……」  諒は黙って、智明のそばに寄ってきた。
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