愛する人へ。

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「じゃあ、まずは廊下に出ようね~」  彼の肩を抱き、智明は今通ってきた暗い廊下へ出ると、あるドアの前で立ち止まり、そのドアを開け、部屋の明かりをつける。  本。  本。  本。  その部屋はまさに、書庫と化していた。  四角い部屋の壁は、全て本棚で塞がれており、更にしまいきれない本が床に幾つもの山となっている。 「りょーく~ん、この状況、わかってる~?」 「……」 「あ・の・ねっ」  肩を抱いていた手と、もう片方の手を、今度は彼の左と右の頬に、顔をがっしりと挟むと、 「分かってる、いや、分かってないよな。確かにここは“本置き場”にしていいと言ったよ。けどこの量はなんだぁ。いや、別に置くなとは言ってない。ここは“本置き場”なんだからな。でもな、いくら鉄筋コンクリートのしっかりした建物でもなぁ、抜ける。このままでいったら、床が抜けるぞ。抜けたらどうなる。ぺしゃんこだ。階下の人はつぶれちゃうぞ。俺、言ったよな。“そろそろ整理したら”って。それが終わるまでは買い控えたらと言ったよな。なぁ、どうなんだぁ」  こねくり返すように、思い切り手を動かした。
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