85人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
この、書庫のような部屋の本たち。本棚に入っているのは、読み切ったもののようだが、床に積み上げられた本。詳しく追及したことはないが、はたしてこの中に読み終えた本は何冊あるのか。途中で放り出したものがかなりあるだろうと、智明はにらんでいる。
本を読むのは良い。
本が好きなのも、もちろん良い。
しかし、読み切らずに新しいものを買ってしまう彼の習性には、少々呆れていた。
もう、何度こうやって説教したことだろう。
自分も少しは本を読む。そういう時、これだけの数があると、ありがたいは、ありがたい。
彼のように自分もじっくりと読む。内容を脳に刻み込む。人物に感情移入したりもする。じわりと心に染み込んだりもする。
だが、そこまでだ。
読むのが遅くなることも、ましてや止まることもない。
一度手をつければ、最後まで確実に読み切る。
本なのだ。
所詮、本の中の出来事なのだ。
「諒、聞いていいか？」
それが出来ないのが、目の前にいる彼だった。
「前から聞きたいなとは、思っていたんだけどさ」
最初のコメントを投稿しよう！