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「彼、毎日のように来て、時間いっぱいまで本を読んでいくの。滅多にかりていかないのよ。どうしてかりていかないのと聞いたら、途中で絶対読めなくなるから、だからかりていかないっていうの。まぁ、ここを利用する生徒はあまりいないし、それならいいのだけど、でも、不思議な子ね」
きっと、本の世界に入り込んでしまうのねと、先生は頬笑んだ。
それから、なんとなく彼の存在が気になりだし、もろもろの事を経て、付き合うに至った。
そうして現在。一緒に暮らしてもいる。
彼は本を読みながら、本当によく泣いた。泣きながらページをめくる時もあるが、大半がそのまま閉じてしまう。
最初の頃は、読まないといつまでも話が進まないよと、言ってみたりしたが、言うたびに返ってくる答えはいつも決まっていて。“読むのが辛い”、“今はまだ受け入れられない”、“読む覚悟が出来ない”の、いずれかだった。
さすがに、回を重ねたところで言うことはしなくなったが、その代わりに、聞きたいことが一つ出来た。
それは、自分(俺)が死んでしまった時だ。
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