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本の中の出来事が受け入れられないというのに、はたして現実で起こってしまった時、身近な人の“死”を、彼がきちんと認められるかだ。
例え、身近な人が自分でなかったとして、親や兄弟、親しい友人だったとしても。“辛い”、“受け入れられない”とは、ずっと言い続けることは出来ない。“現実”、なのだ。
――なかなか躊躇して聞けなかったことを、とうとう聞いてしまった。
「……」
智明はじっと、諒を見つめた。
「……」
諒も、智明を見つめ返してきた。その瞳が、若干潤んでいるように感じるのは、気のせいか。
「どうして」
諒が口を開いた。
「どうして、そんなことを聞くの?」
「“どうして”って。なんとなく」
「“なんとなく”?なんとなくでそんなことを聞くの?」
「……」
「……」
「……」
「……ふふ」
次の瞬間、智明は、心臓を鷲掴みされたような衝撃を受けた。
「大丈夫。俺、そんなに弱くないよ」
彼がにっこりと、微笑んだのである。
「……」
穏やかな表情。しかし、智明の心には、悲しいだけのものにしか、映らなかった。
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