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その証拠に――震えていた。
彼の唇が、堪えているかのように、小さく、小さく、震えていた。
「諒……」
言ってから、後悔する質問など、ただ愚かなだけである。
「ごめん」
軽率すぎた。
「……ううん」
諒が、首を振った。
「智明」
「?」
「抱きついて、いい?」
「いいよ」
「……あたたかい」
寄ってきた諒の背に腕を回し、智明は彼を優しく包み込んだ。
「智明……俺、本の影響と言われればそうかもしれないけど、色々なこと考えるんだ。そのたびに、落ち込んだり、悲しくなったり。智明が俺に聞いてみたかったっていうの、なんとなく、分かるよ」
「……」
「でもね、今、こうやって智明の熱を感じている。智明は、ここにいる。……もちろん、いつかその時はやってくるよ。それは、智明にだって言えることだよね。認めなくてはいけない日がくると、分かっているつもりだよ」
「諒……」
「けど今はここにいる。こうやって触れることが出来る。嫌なことなんて、考えたくない。そう、考えたくないんだ」
諒の瞳から、涙があふれだす。
「俺はバカなんだ。バカなことばかり考えるんだ。お――」
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