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side:アーサー
肩越しに見えた、感情を押し殺したような表情・・・
かつて致命傷を与えた張本人であるヤツの腕に抱かれる華奢な肩・・・
抗いたい気持ちを抑え込んでいるような少し丸まった背中・・・
俺はそれを間近で見ていて、それでも何もしてやれなかった。
かつて弟のように可愛がり育ててきたヤツに、一番大切なものを持って行かれるのを、ただ黙って見送るしかできない無力な自分に、どうしようもない怒りと苛立ちを覚える。
俺にもっと力があれば・・・
傷を負った菊を癒す力が・・・
力を失った菊を守り抜く力が・・・
菊を幸せにしてやる力が・・・
そのいずれも、今の俺にはないもので、そしてアイツにはあるもので。
だから、今は二人の背中を見ているしかできない・・・
これが、俺なりに今できる精一杯の愛なんだ・・・無力で不器用で、俺自身では何もしてやれない・・・
ごめんな・・・菊・・・
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