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何処までも果て無く続く、まさに底抜けの青空。
まだ朝だと云うのに、その空から照らされる陽と上がり始める気温で、早くも汗が滲む。
「いってらっしゃい、あなた」
ちょうど庭先では、出勤する夫を妻が甲斐甲斐しくも送り出している真っ只中だった。
「行ってくるよ、それじゃ」
革製の大きな鞄を手に、夫は背を向けてきびきびと歩き出した。
その背中を見詰める妻の耳に、ドアが開く音が一つ、届く。
隣の家からだ。
視線を向けると、眩しく糊の効いた白いシャツの少年がポーチを抜けて進んで来た。
「あら、渉(わたる)くん。お早う」
隣家の一人息子、渉が格子状の門を閉じると、遠慮がちに小さく会釈する。
「お早うございます」
「もう学校、夏休みじゃないの?」
「いえ……受験対策の講習が有って」
普段から愛想も口数も少なめの渉は、人妻と目を合わせずに俯いたまま。
「そっか、渉くん受験生だもんね。きっと、凄い大学入るんだろうなぁ」
「そ、そんなこと……」
戸惑い半分の渉が漸く顔を上げた時、二人を割く様な声が突然路地に響いた。
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