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太陽は顔をださず、灰色の重たい雲が空をおおっている。
空気は湿り、ついさっきまで雨が降っていたせいか、川は水かさを増し、少し土砂を含んだように濁っている。
小さな村を横切るかたちで流れている、これまた小さな川は、作物を育てるための水を運び、村の人びとの生活に欠かせないものとなっている。
太陽が出ている日は、きれいに透き通った水の中に、青く光る小魚が泳いでいるのが見え、その水面を反射する光がきらきらと輝いているが、今は小魚たちも姿を隠し、ごつごつした岩だけが見えている。
川沿いの土手に、一人の少年が座り込んでいる。
十代の終わりごろといった顔つきで、豊かな淡い色の髪は緩やかにカールし、輪郭をなぞるように肩のあたりまで伸びている。
まだ乾いていない髪からしたたり落ちてきた水滴が地面にあたりぽたぽたと音をたてるが、少年は気にもとめていない様子であった。
彼は、何か考えごとをしているように、青い色の目をじっと流れる川にむけたまま長い間動かずにいた。
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