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少年は名前をレイノルといい、村の中では比較的裕福な家に生まれ、なかなかに立派な屋敷に住んでいる。
両親は二十年ほど前に、二人でこの小さな村に越してきた。そして、所有者がわからず誰も手入れをしなくなっていた屋敷を買い取り、そこに住み始めた。
この屋敷には、どこで手に入れてきたのか判らないが、書斎に入りきらないほどの書物がある。しかし父親がごく稀に一冊を手にとり、懐かしそうにぱらぱらとめくるとき以外は、他の誰も、あの膨大な量の本を開くことはなかった。
彼らはその後小さな牧場を作り、そこからとれるチーズや、牧場のすみに作った畑からとれる野菜などを、近所の人たちが作るパンや干し肉などと交換し暮らしている。
父親も母親も柔和な人柄で、叱るべきときは叱るが、それ以外はいつも穏やかで、楽しそうな顔をしていた。レイノルはそんな両親が大好きで、また尊敬していた。
村の人びとも同じように彼らを慕い、来たばかりの頃は、慣れずまだおぼつかない牧場の仕事を一緒に手伝うなど、気にかけていた。
中には、彼らの落ち着いた物腰と立派な屋敷から、「きっと彼らはもともとどこかの国の王族で、何か重大な事件があってこの村に逃れてきたのだろう。」と勝手に信じ込むものがいるくらいだった。
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