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石畳に、かつりと靴音が響く。闇がわだかまるその空間にひっそりと暮らす鼠達が、慣れない音に驚いて四方へと逃げていった。
彼らの後を追うように、何十年もの間、光の侵入を拒んできたその空間を、揺らめく灯りがゆっくりと照らし出す。
「ほぉ…」
「へぇ…」
感嘆するように零れた声は二つ。四つの瞳が、興味深げにきょろきょろと辺りを見渡す。洞窟の奥に広がるその空間にそびえているのは、荘厳な石造りの神殿だった。
流石に砂に侵され、石のつややかな表面は残ってはいないものの、陽の光に晒されることのなかった壁面には今もなお、壁画が鮮やかな色彩を残している。松明をかざせば、ところどころにきらりと反射するのは、黄金の輝きではないだろうか。
それらの全てが、まだこの古代の神殿が、盗掘により荒らされていない事を示していた。
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