鏡の中のキミは

2/16
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
石畳に、かつりと靴音が響く。闇がわだかまるその空間にひっそりと暮らす鼠達が、慣れない音に驚いて四方へと逃げていった。 彼らの後を追うように、何十年もの間、光の侵入を拒んできたその空間を、揺らめく灯りがゆっくりと照らし出す。 「ほぉ…」 「へぇ…」 感嘆するように零れた声は二つ。四つの瞳が、興味深げにきょろきょろと辺りを見渡す。洞窟の奥に広がるその空間にそびえているのは、荘厳な石造りの神殿だった。  流石に砂に侵され、石のつややかな表面は残ってはいないものの、陽の光に晒されることのなかった壁面には今もなお、壁画が鮮やかな色彩を残している。松明をかざせば、ところどころにきらりと反射するのは、黄金の輝きではないだろうか。 それらの全てが、まだこの古代の神殿が、盗掘により荒らされていない事を示していた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!