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「ちょっとぉ、レイアン。避けないでちゃんと全部落としてよ!じゃないと僕に当たるよね!?」
冷たくなった背にアメルの声が跳ね返り、レイアンに一気に熱が戻る。
「さりげなく人を盾にした奴が言う台詞かアホ!つーかお前が発動させたんじゃねェか!1本くらい自分で落とせよ!」
「えー。めんどいしー?」
袖の肩に近い部分を矢で壁に縫いとめられた少年は、ぷーっと頬を膨らませる。そして自分を縫い止めた矢を引き抜こうとするが、10秒引っ張って諦めた。自分を睨みつけてくるレイアンににっこり笑い返すと、ちょいちょいと矢の先を指で示す。
わなわなと肩を震わせたレイアンはずかずかとアメルに近づくと、無言で矢を引き抜いた。そのまま握った手をアメルの頭に振り下ろしたが、ひょいと避けられる。空振りした手が、勢い余って壁に触れた。
ずり、と音がした。
「げ」
「うわー、ピンポイントだね?」
石組みの壁の中、触れた一つのブロックが僅かに壁に沈み込んでいた。
盗掘されていない遺跡というものは、大概がトラップと仕掛けのバーゲンセールだ。先へ進む為には仕掛けを解除せねばならず、その仕掛けにはたっぷりとトラップが混ぜられている。故に扉を開く仕掛けだと思ったらトラップ、なんてことは日常茶飯事だ。
稀に、逆のパターンが無いとも言えないのだが。
軋むような、鎖を巻き上げる音を聞いて、二人の眉がわずかに上がる。
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