奇跡

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「私な……」 「う、うん……」 美穂が次に出す言葉が 怖かった。 でも、美穂はその気持ちを 優しい瞳と言葉で 癒してくれた。 「私…… 何で手術して生きよう、 って頑張れたと思う? 何でここに来たと思う? 巧の忘れモノを聞きたくて 巧の届けモノを受け取りたくて 巧の告白を聞きたくて ここに来てんで! 6年間、それだけが生き甲斐やってんで!」 「美穂……じゃあ?」 「当たり前やろ! 巧、私は離れへん。 もう離れへんねん!」 そう言うと 再び美穂は俺の胸に 顔を押し付けた。 俺はそんな美穂を 抱き締めながら一言呟いた。 「おかえり、美穂……」 「ただいま、巧……」 俺達はまるで 時間が止まったかの様に 抱き合い続けた。 手からすり抜け落ちた花束だけが 唯一のギャラリーとして そんな俺達を 祝福してくれた。
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