way of life―seventh―

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人は、忘れる生き物だ。 眠くなったら寝るように。お腹が空けばご飯を食べるように、忘れることは当たり前で日常茶飯事なこと。 でも、忘れたくないことは、絶対にあるものだ。 薄れていく思い出。最初は悲しいかもしれないが、やがて、忘れたことさえ忘れてしまう。 あのときは、分からなかった。 忘れるのが、居なくなるのが、ここまで恐いなんて。 『私にとっての家族はみなさんですので。 療も想一郎さんも零さんも桜さんも脚斗さんもお父さんも、そしてもちろん大輔さんも。 みんな私の家族です』 愛は言った。あのとき。自分を家族と言ってくれた。 それでも今日ほどの感動はなかった。嬉しいとは思ったけど、それ以外の感情はなかった。 あのとき俺は、一体どこから愛を眺めていたんだろう。 家族の中から? 最下荘の一員として? ひょっとして、まったく関係なかった第三者の視点から眺めてはいなかったか? 『今いるみなさんは違います。 一緒に居過ぎたんです。 もし……誰か1人を見送らなきゃいけなくなったとき……私は……どうすればいいのでしょう……』 家族がいなくなる。 数日前まで、その辛さがイマイチよく分からなかった。親はまだ生きているし、ほかに兄弟も姉妹もいない。 だから言えた。 ―――そんなに今から考えなくてもいいんじゃないですか?――― 考えるから辛くなる。未来に起こることは、その都度考えればいい。 辛いことを考えれば気持ちはどんどん落ち込んでいく。だったら考えなければいいじゃないか。 「……ほんとに馬鹿だよ。俺は」 きっと、愛はわかっていた。考えるだけ辛いということぐらい。 それに、そんなその場限りの答えが聞きたかったわけじゃないだろう。あれぐらいで良いのなら、わざわざ新参者の俺に聞かなくても良かったわけだ。 でも愛は俺に訊いた。 それを――― 「……たまらないな」 ずっと居て欲しいなんて、最下荘の大家である愛が言えるわけがない。 見送るときどうしたら、なんてずっと誰にも言えなかったに違いない。 あのときは、まだ自分が新しい入居者だったから、訊けた質問だったのに。 「もっと真面目に考えれば良かった」 もう愛が、自分に弱音を吐くことはないだろう。  
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