way of life―first―

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「……おはよう」 振り返りざまににっこりと笑ったあと、すぐさまドアに手をかけた。 まだ逃げられる。 ドアを力まかせに開けると廊下に向かってダッシュをして――――できなかった。 腕を、誰かが掴んでいた。 「大輔、どこいくのかな?」 いやに優しい声。思わず冷や汗が頬を伝った。 「いやちょっと忘れ物を取りに」 大輔の腕を明徳がしっかりと掴んでいる。 駄目だ……外れない…… 「そんなものあとでいいから…… ちょっとおれの席に来てよ。お菓子があるよ」 あはは。絶対嫌だ。 「いや、なんか俺腹いっぱいでさ……」 「大丈夫。お菓子は別腹だから入るでしょ」 「俺不器用だから腹は一つしかないんだよな」 話している中もずっと腕を動かしているのだが、明徳は決して離そうとしなかった。 こんなやつのどこにそんな力が…… 「さ、行こう大輔」 「嫌だ! 行きたくない! 司の愚痴なんて聞きたくない!」 「心配しなくていいよ大輔。 愚痴じゃないから」 「へ?」 「あれは愚痴なんて甘いもんじゃない。 言うならば……“ネガティブになる呪文”かな」 「そっちのほうが嫌だ」 反抗空しく大輔は明徳に連行された。 司の待つ、魔のネガティブ地帯へと。  
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