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教科書を1冊残してほかは机にしまう。
そのあと、教科書を広げた。
昨日からの続きと、最後の追い込みだ。
まったく、なんでテスト後なのにこんなに勉強しなきゃいけないんだよ。
追試のないやつがうらやましいぜ……
「…あれ?」
追試って…確かオレだけじゃないよな。
あと未使魔と…
「豊」
反射的に名前を呼んでしまった。
豊の目が動き、自分を見る。
顔は動かさず、瞳だけが司を捕らえた。
宝石みたいな蒼い瞳。
普段から長い前髪で隠れがちな瞳なのだが、目がどこにあるのかわからなくなることはなかった。
今よりもっと髪が長いときもあったのにだ。
不思議な存在感を放つ瞳、それにしばし目を奪われていたが、ハッと我に返り、
「あのさ…豊…
お前も確か追試あったよな」
「あるよ」
淡白な返事。
その返事のあと、司は教科書を閉じて豊と向かい合わせになった。
「勉強しなくていいのか?
今日あるかもしれないんだぞ?」
「大丈夫。
勉強してるから」
「その本でか?」
司が豊の持っている文庫本を指差した。
その本は参考書なのか?
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