-エピソード狩人-

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 カツンッ、カツンッと、狩人の足音が、もうとっくに消灯時間の過ぎている院内の廊下に響いた。  予め号室を記憶していた狩人は、503と記録された号室の扉を開けた。  患者は一人。  室内では、幾重にも重なる配線が、迷路のように患者の身体を這っていた。男か女かの判別もできない。  狩人は、黒の皮手袋を外すと…その異形の右手を患者の頭の辺りにかざした。  右手からは暗闇の中でも、更に黒いと認識できる程の黒さを持った球体が現れたかと思うと、一瞬で砂のように広がり患者の中に吸い込まれた。  数秒の時を経て、患者の身体から再び姿を現した物体は、狩人の全身を覆った。  狩人の中に、患者の記憶が一瞬で流れ込む。  狩人の肩が、下から突き上げられたようにして、大きく盛り上がった。  右手には、最初に出した球体と同じ大きさの球体が浮かび上がった。  同時に再び暗黒の球体は、患者の身体に砂のように変化して吸い込まれていった。  患者の心電図は、反応を示さなくなった…。  ドタバタと看護師の駆けつける音が聞こえる。
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