38人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
時々、夢を見ているのか、記憶を辿っているのか、わからなくなる時があった。
少年は、父と母の三人で暮らしていた。
クリスマスイブの日、少年は、母と共に父の帰りを待っていた。
残念ながら雨のクリスマスイブだったけれど、少年の心は高揚していた。
「ママ! このおっきい鶏は、どこから食べてもいいの?」
テーブルの中央に、三本のもも肉が置かれてあった。
いいよ、と、母は少年の頭を撫でながら言った。
少年は、随分と鶏肉が気に入ったらしく、ジッと鶏肉を見つめていた。
「早く……」
…ピンポーン。
母の言葉を遮るように、インターホンが鳴った。
「パパかなぁ?」
母と少年は、駆け足で玄関へと向かった。
モニターを確認せずに、母は扉を開いた。
誰がインターホンを鳴らしたのかの確認もせずに…。
良くある日常に慣れすぎていたがために…。
すべてが…。
一瞬だった。
少年には、何が起こっているのか理解できなかった。
スローモーションで起こる出来事を、ただ見守っている事しかできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!