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少年も母も、知らない人間だった。
男は、扉を開けたかと思うと、目深に被った帽子から、鋭い眼光を放って、母の口元を左手で抑えた。
怯んだ母は、そのまま後ろ向きに倒れ、殴打を繰り返された挙げ句……。
動かなくなった。
男は、少年には一切手を加えなかった。
ただ、一瞥して部屋中を荒らして出て行った。
少年は、言葉も涙も出なかった…。
白が基調のフローリングが、赤というよりも、少し黒の混じった血で、赤く染まった。
血が、少年の足元にまで流れて来ていた。
少年は…目を…閉じた…。
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