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 非現実的な事を生業としている…そんな人々を紹介するサイトがあった。  志津子は、何度か現実にあったと耳にした事のある、職業を探した。  今、志津子にとって、どうしても必要な職業であった。 『素敵な夢が、見てみたい』  そんなあなたは是非…ご来店下さい。実現致します。      -夢野- 「これね!」  志津子は、拳にぐっと力を込めて立ち上がると、書斎を後にした。  10階建てを越えるマンションが乱立する中、一棟だけ、周りのマンションに囲まれるように、6階建てのマンションがあった。  マンション『メル』の最上階は、全て夢野兄妹の持ち物である。  エレベーターで6階まで上がると、降りてすぐ、1メートル程の幅の通路があった。  通路の長さは3メートル程で、屋上のように吹き抜けであった。  通路の先に行き着くと、マンションにはおおよそ場違いな、まるで屋敷を思わせる、屈強な左右に開く扉があった。  けれど、その左右扉は、意外と力を込める必要なく開く。  20畳程の空間が見える。窓もキッチンもない。
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