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ほぼ、部屋の中央にある黒いテーブルを中心に、三人掛け程度の、白と黒のソファーが対座しているだけであった。
望は、白いソファーの上に女性を仰向けにさせると、女性の額に手をかざした。
望の手が、白熱灯に近い微量の光を放ち始めた。
30秒程、放たれ続けた光は、望が手を下ろすと、瞬く間に消滅した。
「いい夢、ご覧になれましたか?」
望は、少し膝を折り、女性の肩を軽く叩いて言った。
女性は、怪訝そうな顔を見せたかと思うと、すぐさま、とても満足そうな笑みを浮かべ、部屋を後にした。
女性が部屋から出たのと同時に、インターホンが鳴った。
望は首を傾げ、忘れ物でもしたのかと部屋の中を見回した。何もない。
望は、インターホンを取った。
「こちらで記憶の一部と引き換えに、夢を見せて頂けるとお聞きしたのですが…」
望は間断なく答えた。
「お見せ致しますよ、どうぞお入り下さい」
新しいお客様である。
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