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 少し気になるな…そう思いながらも、望は初老の男を、志津子と2人がかりで抱えあげると、黒いソファーの上に寝かせた。  望は、初老の男の額に右手を置いた。  男の名は作治。妻の名は千代。  最も近い記憶から、次々に望の右手を伝って、光の粒子化した記憶が流れ込んでくる。  千代が交通事故に遭った記憶を見つける。  望の右手に流れ込んできていた光の粒子が、望の掌で貯留し始めると、そこにサッカーボール大の、丸い光の球が形成された。  光の球を、両手で何度か丸めるような仕草をすると、望は光の球を頭上にかざした。  次の瞬間…。  光の球は、空間で音もなく弾けた。  志津子が表情を曇らせ、弾けた空間を見つめた。  望の身体が小刻みに震えだす。  光の球が、弾けた空間から再び姿を現した。  消えた光の球よりは、幾分小さく見える。 『ん? 小さい…』望は、心の中で呟くと、気のせいだと言うように首を横に振った。  望は、光の球を作治の額に押し込んだ。  作治は、夢を見た。  それは、鮮明な記憶よりも、現実味溢れる夢であった。
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