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彼氏の体はバタンと音を立てて、床に落ちた。
周りにいた人質達が『キャー!』という叫びと同時に、一気に後ろへ退いた。
駆けつけると、既に即死状態だった。
彼氏の口からは、最後の言葉すらも発せられることはなかった。
彼氏の名前を天井が突き抜ける程絶叫し、大粒の涙が溢れた。
彼氏を抱える愛梨の手は、流れ出す血液で一気に真紅に染まった。
「ほう、『最強の能力者』といえど涙を流すのか?」
暁人は水をさすように、冷たい言葉を投げかける。
一時の悲哀が憎悪へとすり変わる。
「…お前達、何者だ?」
涙を拭い、振り返って男を睨んだ。
「俺は優神信会の七光の一人、星崎暁人(ほしざきあきと)だ」
優神信会……?
七光……?
何者だろうが、ただでこの場から返すわけにはいかない。
平常心などもはやなくなっていた。
この状況で能力が一般人に知られてはまずいなどと、言ってる場合ではないのだ。
「お前は今すぐに殺してやる!」
言葉より体の方が先に動いた。
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