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今日も朝がやってきた。
それは一番好きな時間。
すべてを明るく照らし出してくれるような、そんな気がするから。
今日も瞼にあたる日の光と鳥の囀り(さえずり)が朝を告げる。
四年前まである組織に在籍していた小田愛梨(おだあいり)は、現在では某大学の三年生である。
愛梨にとってそこは一番大切にしている場所だ。
大学に行けば、友人に会える。
大学に行けば、今までとは百八十度違う平穏過ぎる日々を送れる。
そんな幸せなことはない。
「行ってきま~す」
愛梨はつま先でトントンと音をさせながら靴をはき、右手でドアノブを回した。
「愛梨、『いつものこと』わかってるよね?」
愛梨の祖母は突然腕をつかみ、真剣な眼差しでそう聞いてきた。
毎朝出かける間際にこの確認をしてくるから、愛梨はいつもうんざりさせられている。
言われなくともそんなことはわかっている。
「いつものこと」とは……
一般人に能力がバレないようにしろ、ということを意味する。
そう、愛梨は日常を手に入れる代わりに、自らの能力を封じることを厳守している。
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