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本日のデートは新宿でボーリング。
愛梨はボーリングやカラオケなど、十代二十代の子ならほとんどやったことがある遊びを、大学に通うまでしたことがなかった。
彼氏はボーリングやダーツなど幅広い遊戯に精通しているため、愛梨は今日も彼氏に惨敗してしまった。
でも楽しめたんだからそれでいい。
あっという間に彼氏とのデートも終わった。
別れ際は少し寂しかったけど、またすぐ会えるから大丈夫と心で言い聞かせた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
電車を降りて、家まで歩いて帰る。家は閑静な住宅地なので道は若干暗い。
突然、誰かが姿を現した。
百八十センチはあるほっそりとした長身でワックスでたてた少し長めの茶髪。
最初は誰だかわからなかったが、近づくことでわかった。
胡桃沢良(くるみざわりょう)。
良は愛梨が以前に在籍していた組織の一員で、『ケビン』というコードネームで呼ばれている。
年齢は彼氏と同い年の二十二歳である。
組織をやめてからは会う回数は激減したが、たまに会って適当に話をする。
もはや腐れ縁のような関係である。
「愛梨。久しぶりだな」
愛梨の組織でのコードネームは『カトリーナ』だったが、組織をやめた者はコードネームを捨てた本名で呼ばれる。
「アポなしで会いに来るとは珍しいわね」
「あぁ。少し話したいことがあってな」
ケビンの視線が一瞬、横に逸れた。
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