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「俺、組織をやめたんだ」
『ケビン』……いや、組織をやめたなら本名である『良』と呼ばなくてはいけない。
良はそんな重大なことを、まるで挨拶のようにさらっと言ってみせた。
良が組織をやめたことには驚き、愛梨の眉間に力が入った。
良は普段何をするにも面倒くさいオーラを出すが、いざという時にしっかりしている。
組織をやめたのは、組織の長官である降旗の横暴なやり方だけが理由ではないだろう。
何か他に理由が絶対にあるに違いない。
「降旗が差し向けた追っ手の処理は、本当に面倒だったわ。今から大変ね~」
「あぁ、くそ面倒だな!」
少し嫌味のつもりで言ったが、良は普通に受け止めているようだ。
大概組織をやめる能力者が、かなり高度な能力を持っている。
良ほどの能力者ならば、追っ手なんかにあっさり殺されはしない。
実力故の余裕というものだろう。
「そういえば良、私にそれだけを言いにきたの?」
笑顔で切り返しにかかった。
前置きはここまでにしておきたいものだ。
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