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愛梨が去り、良とジャンだけになった。
良はとりあえず一息ついてから、ウィスキーを口に含む。
「ねぇ、良。どうして何も言わずに組織を抜けたりしたの?」
ジャンは甘えるような口調で話かけながら、良の隣の席に座った。
「ただ降旗が気に入らないだけさ。あいつの顔は二度と見たくはない」
ジャンが良の飲みかけのグラスを、上から下へ強くテーブルに叩きつけた。
グラスは割れはしなかったが、中のウィスキーはカウンターの広範囲に飛び散った。
その大きな音に、他の客の視線が一気に集まる。
「それだけでないことは、わかってるんだ」
ジャンの声の質や目つきが、急激に変わった。
このギャップに、組織の新入りの能力者はいずれもびっくりする。
「……この組織は、俺にとって枷でしかないからだ」
ジャンの豹変ぶりに驚くことなく冷静に答えるが、良の表情はジャンが今まで見たことがないくらい険しくなっていた。
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