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十二月とは、こんなに暖かいものだったろうか。
未だに日中気温の高い日々は、僕らの季節感を知らぬ間に狂わせていた。
異常な季節。これが温暖化の影響と言うものだろうか。
もう真冬と言っても良いはずなのに、昼になると上着を脱ぎたくなる。特に窓際のこの席にいると、日光が直接当たって、黒の学生服が僕を焼いてしまおうとするのだ。
そんな中で、僕は十分も集中できない。視線はいつも、勝手に窓の外に移っている。
中庭の紅葉は、まだ黄色い葉をしっかりと抱えている。
ヒュウッと高く鳴きながら、きっと冷たいであろう突風が吹いた。大きな頭を静かに震わせる紅葉の木。
沢山の葉があっけなく落ちていく中、まだ耐えている一枚に目が留まる。
二度、三度と風が襲いかかるのだが、その身を激しく揺らしながらも、落ちまいと必死にしがみついている。
四度目の波。
今度こそは落ちるだろう。
できれば、そう簡単に落ちて欲しくはない。まだ、この無意味な時間を続けていたい。
でも、落ちるだろう。
ひと揺れ。
ほら、やっぱり落ちた。僕の淡い期待をさっぱり無視して、ゆっくりと降りていく黄色。
着いた先には、彼の仲間たちが沢山いた。あんなに失っているのに、まだどっさりと蓄えを持っているのは、どこか不自然に見える。あれが全部落ちていくというのは、途方もないことのように思われた。
それでも、やっぱり、落ちてしまうのだ。誰も、逆らえない。彼もそうだった。そしてまた春が来て、数えきれない緑で飾るのだ。
もう、十二月だ。
この木が裸になるころ、僕は何処にいるのだろう。
まるで雪のように降り積もった落ち葉から、正面の黒板へと、意識を切り替えた。
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